助産師や看護師が退職を伝える際のタイミングと伝え方【注意点も解説】

 2024.12.13更新

助産師や看護師として働く中で退職を考えたとき、退職の意思を上司にどのように、いつ伝えるべきか迷っている方が多くいます。

看護職の仕事は、患者との長期的な信頼関係や医療チームでの協力が求められるため、伝え方やタイミングに特別な配慮と計画的な行動が重要です。この記事では、助産師や看護師が最適なタイミングで退職を伝え、円滑に手続きを進める方法を解説します。

記事を読むと、スムーズに退職の意思を伝え、職場での人間関係を良好に保ちながら円滑に退職を進められます。

看護職が退職を検討する理由

助産師や看護師が退職を検討する理由はさまざまです。以下に代表的な理由を挙げます。

長時間勤務やシフト勤務による体力的・精神的負担

助産師や看護師の業務は長時間勤務が多く、深夜のシフトも頻繁にあります。体力的・精神的な負担が蓄積し、退職を考えるきっかけになることがあります。

プライベートとのバランスの難しさ

医療従事者は急な出勤や長時間の待機が求められることもあり、家族やプライベートとのバランスを取りにくいのが実情です。特に緊急対応が必要な場面が多い職種のため、柔軟な対応を求められることが負担となる場合があります。

キャリアアップや専門分野の変更を考えたとき

スキルアップや新たな専門分野に挑戦するために退職を決断することもあります。助産師や看護師としての経験を活かして産後ケアや訪問看護などの分野に移るなど、さらに専門性を追求する方もいます。

助産師や看護師が退職を伝える際の特有の難しさ

看護職として働く方は、退職を伝える際に他の職種にはない特有の難しさを感じることが多いです。その理由を以下に挙げます。

患者との長期的な関係性を考慮する必要性

助産師や看護師は、妊娠期や慢性疾患の管理、終末期ケアなど、患者と長期間にわたり深く関わる場面があります。突然の退職は患者に不安を招く可能性があるため、タイミングや伝え方に十分配慮することが求められます。

医療チームへの影響と業務の引き継ぎ問題

医療チームでの連携が必要な看護職の仕事は、他のメンバーへの負担軽減も考慮が必要です。円滑な引き継ぎのため、タイミングを調整しつつ事前の準備が大切です。

患者に対する心理的な配慮の必要性

退職の際には、妊婦や産後の母親、慢性疾患や終末期ケアを受けている患者に対する心理的な配慮が重要です。直接患者に説明する場合には、安心感を与える伝え方が求められます。

退職の意思を伝えるタイミング

退職の意思を伝える適切なタイミングを知ることは、スムーズな退職に欠かせません。適切なタイミングで伝えることで、業務を円滑に引き継ぎ、職場の業務に与える影響を最小限に抑えられます。

退職の1〜3か月前に伝えるのが理想

退職を決めたら、退職予定日の1〜3か月前に上司へ伝えるのがベストです。事前に退職の意思を伝えることで、業務の引き継ぎや後任者を探すために必要な時間を十分に確保できます。業務がスムーズに継続し、職場の運営に影響を与えずに済みます。

上司との信頼関係を保ちながら退職を進めるためには、突然ではなく計画的に退職の意向を示すことが重要です。具体的な退職日を提示して、計画を共有すると、双方にとって納得のいく退職ができます。

人事異動直後や繁忙期は避ける

退職を伝えるタイミングとして避けるべきなのは、人事異動直後や繁忙期です。組織の構成が変化し、メンバーが新しい業務に慣れている途中であり、業務の引き継ぎがスムーズに進まない可能性があります。

繁忙期は業務量が増加し、人員不足が生じやすい状況です。繁忙期の退職は、残されたメンバーに過度な負担がかかり、部署全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことが考えられます。組織内のモラルやチームワークに悪影響を与え、退職がスムーズに進まないこともあります。

人事異動が落ち着いている時期や、業務が通常運行している時期に退職の意向を伝えましょう。適切な時期に伝えることで、よりスムーズな業務の引き継ぎができます。

退職を伝える前に考えるべき準備項目

退職を伝える前には、理由の整理や引き継ぎの準備も欠かせません。準備項目は以下です。しっかり準備して円満退職しましょう。

退職理由の整理と明確化

退職の際には、上司や同僚が納得しやすいよう前向きな理由を述べることが重要です。「キャリアアップ」や「ワークライフバランスの改善」などを理由にすると、退職が受け入れられやすくなります。

引き継ぎの準備

退職後の混乱を防ぐため、業務内容を整理し、引き継ぎ資料を作成しておくと良いでしょう。後任者やチームが円滑に業務を引き継げるよう配慮します。

看護職が退職の意思を伝えるときの注意点

退職の意思を伝える際には、以下の注意点を押さえる必要があります。

スムーズな引き継ぎや後任の準備のために、上記の内容に気をつけて退職の意思を伝えましょう。

直属の上司に口頭で伝える

退職の意思は、まず直属の上司に直接伝えるべきです。医療職としての役割や今後の予定を簡潔に説明し、引き継ぎについても具体的に提案しましょう。

面談では、退職の意思が固いことを明確に伝え、理解を求めることが大切です。退職理由を簡潔に説明し、今後の業務引き継ぎの提案も行います。面談中は上司の反応を見ながら、質問は正直に答えましょう。

ネガティブな退職理由は伝えない

退職理由は、ネガティブな内容や過去の不満に焦点を当てないことが重要です。過去の不満や問題点を掘り返さず、前向きな理由を伝え良好な関係を保つようにします。

以下のような、自己成長を目指すポジティブな理由を伝えることが望ましいです。

ポジティブな理由は退職の話をスムーズに進められ、将来的な職場との良好な関係の維持に役立ちます。

強い退職意思を伝える

強い退職意思を伝える際には、意思の明確さと確固たる理由が必要です。 自分の決断が変わらないことを、感情的にならずに理性的かつ冷静に伝えましょう。

医療従事者としての将来の計画を説明し、退職が自己成長のためのポジティブなものであることを示します。上司の理解や同意が得られるまで、丁寧に説明を繰り返しましょう。

受け入れられやすい退職希望日を伝える

退職希望日を伝える際には、以下のポイントを考慮することが重要です。

年度末やプロジェクト完了時は、業務の引き継ぎがスムーズになり、職場も退職を受け入れやすいです。人事評価期間を避けることで、評価に影響を与えずに退職手続きを進められます。

後任者の育成に必要な期間を考慮し、十分な時間の確保も重要です。十分な時間の確保は、業務のスムーズな引き継ぎに必要であり、退職後の部署の運営に支障が出ることを減らします。長期連休前など、業務が一段落するタイミングを選ぶと、余裕を持って準備ができ、双方にとって都合が良いです。

法的な最低通知期間を守らないと、退職がスムーズに進まず、法的な問題にも発展する可能性があります。

助産師や看護師の退職の伝え方

退職を円満に進めるためには、伝え方や順序も重要です。以下に、具体的な方法について解説します。

円満退職のための伝え方の基本ポイント

伝え方のポイントは以下の2つです。

円満な退職を実現するには、感謝の気持ちをしっかりと伝えることが大切です。今までの経験と成長の場を与えてくれたことへの感謝を表すことで、良好な関係を保ちながら退職することが可能です。

「新たな環境でキャリアを積みたいと考えています」や「家庭と仕事のバランスを見直すため」といった前向きな表現を使うことで、相手に良い印象を残しやすくなります。

退職を伝えるための順序

退職を伝える順序は以下です。

上司への報告は、職場内の秩序と信頼関係を守るためにも優先的に行うべきです。

日本では労働基準法により、退職は2週間前の通知で法的に有効ですが、職場のルールに従って早めに伝えるのが一般的です。

同僚や他のスタッフには、適切なタイミングで伝えることが重要です。患者に対しても安心感を与えつつ、引き継ぎがスムーズに進むよう努めましょう。

同僚と関係各所への退職の伝え方

退職を伝える際には、職場の関係者や外部への適切なコミュニケーションが重要です。業務の円滑な引き継ぎや良好な人間関係の維持のために、スムーズな退職ができる伝え方を意識しましょう。

同僚

同僚へは退職が確定してから、小規模なミーティングや個別の会話を通じて伝えましょう。良好な関係を維持しながら、プライベートな情報の流出を防ぐのに役立ちます。

同僚へ感謝の気持ちを伝えることは、円滑な関係の継続にもつながります。引き継ぎの準備やサポートの申し出を行うことは、退職後も良好な関係を保つために重要です。労働環境や個人的な話題で誤解が生じる可能性もあります。なるべくプライベートな内容は避け、関係を崩さずに退職しましょう。

関係各所

関係各所へ退職を伝える際は、書面での通知が一般的です。関係各所と良好な関係を維持し、誤解を避けるための重要なやりとりです。退職により担当者が変わる点をはっきりと伝え、新しい担当者の情報を提供します。

関係各所への影響を最小限に抑え、看護職としての業務のスムーズな引き継ぎを目指します。これまでの感謝の気持ちを伝えて、信頼関係を保ちつつ、円滑に引き継げるように対応しましょう。

退職の伝え方：よくある質問とその答え

多くの人が退職の伝え方に疑問や不安を抱えています。以下の内容を、スムーズに退職を伝えるための参考にしてください。

退職願と退職届の違いは？

退職願と退職届は退職を伝えるときに重要な役割を果たしますが、それぞれ異なる用途で使用されます。

退職願は、退職の意志がまだ固まっていない場合や、退職に向けての相談や日程調整をする際に使用されます。退職届は、退職日が確定した後に提出されることが一般的です。法的な効力を持ち、提出後、職場は必要な手続きを進めなくてはいけません。

退職願は比較的柔軟に扱われることが多いのに対して、退職届はより正式な手続きのための書類です。退職を検討している場合は、2つの文書を適切に使用できるように違いを理解しておきましょう。
» 助産師や看護師の退職手続きの流れを解説

退職理由は具体的に伝えるべき？

明確な理由を伝えることで、助産師や看護師としての将来のキャリアアップへ理解を示してもらえます。しかし、退職理由を伝える際の伝え方には注意が必要です。職場の問題や対人関係が退職理由である場合、具体的な事例は避けましょう。

自己成長やキャリアアップを目指す内容の退職理由は、ポジティブな形で伝えるとより良い印象を与えます。個人的な理由やネガティブな内容を退職理由として伝える場合は、前向きな姿勢を強調しましょう。退職が将来に対してポジティブなステップアップであると捉えてもらえる可能性が高まります。

退職後の職場との連絡の取り方は？

退職後も前勤務先と良好な関係を維持することは、将来のキャリアにとって有益です。同僚や上司と個人的な連絡先を交換すると、コミュニケーションを確保できます。定期的な挨拶のメールの送信は、関係を維持するのに役立ちます。

個人的または職業的に大きな変化がある場合、情報の共有も効果的です。業界イベントやセミナーは元同僚や上司と顔を合わせる機会となる場合があり、最新の業界情報の交換や再会を楽しめます。助言や相談が必要な場合には、敬意を持った対応をして、適切なマナーを守りましょう。

退職代行サービスの利用は適切？

退職代行サービスは、退職意志の伝達や最終勤務日の調整など、退職に関連するさまざまな手続きを代行してくれます。特定の状況にいる人にとっては役立つサービスです。雇用者との直接対話が困難な場合や、不適切な労働環境など退職が自分一人では難しい場合におすすめです。

メンタルの問題で自分自身での退職交渉が困難な場合にも適しています。退職代行サービスの利用には費用がかかるため、費用対効果を考慮して自分にとって適した退職方法を選択しましょう。

退職に際して、引き継ぎ業務はどのように行うべき？

引き継ぎは退職前に計画的に行うことが重要です。患者のカルテや今後のケアプラン、重要な連絡先などをまとめた引き継ぎ書を作成し、後任のスタッフや関係者と詳細に情報共有を行いましょう。

退職後、助産師や看護師としての資格や免許について注意することは？

退職後も資格や免許に関する義務や規定がある場合があります。例えば、定期的な更新や研修が必要な場合がありますので、退職後も資格を維持するために必要な手続きを確認しておくと良いでしょう。

助産師や看護師が避けるべき退職理由の内容

退職理由を伝える際は、以下の内容は避けた方がよいです。

批判的な内容

批判的な内容を退職理由にすると、将来の関係性に悪影響を及ぼしかねません。批判的な意見は、非建設的であり、職場での社会性を疑われる原因となる可能性もあります。感情的な発言や批判は、医療従事者としての将来的なキャリアにおいて信頼性が損なわれやすいです。

職場の人に対する否定的な内容を退職理由とした場合、新たな職場で同様の態度を取るのではないかと疑われることがあります。職場の方針や仕事内容に対して批判的な意見は、他の雇用主にも同様の問題を引き起こすと見なされやすいです。

退職理由は推薦状の取得や退職後の人間関係にも影響を与えることがあるため、より建設的かつ前向きな退職理由を選びましょう。

給与や待遇の不満に関する内容

退職理由として「給与や待遇の不満」を会社に伝えることは避けるべきです。給与や待遇の不満を感じるのは自然なことですが、職場側にネガティブな印象を与えます。今後の関係性や推薦状などに悪影響を及ぼす可能性や、同じ業界での評判にも影響を与えるリスクもあります。

「給与が低いので退職する」と伝えた場合、給与に対する不満だけで退職を決意したと受け取るかもしれません。不満を伝えることで、悪い評判が業界内で広まり、次の職場探しに影響してしまうケースも考えられます。医療職としてのキャリアアップや新しい挑戦など前向きな理由を強調して、円満な退職をして良好な関係を維持しましょう。

曖昧な内容

退職理由が曖昧な場合、自分の感情や将来の目標が不確かなことが多いです。不安定な人間関係や明確でないキャリア計画など、将来に対する不安が主な理由の一つです。仕事の役割や責任が不明瞭な場合や、仕事の目的や意義が見えない場合も、退職を考える理由としてよくあげられます。

自分でも何が不満なのか、何を解決すべきかが不明確であることが考えられます。曖昧な理由で退職を考えている場合、自己反省を深め具体的な理由や解決策を見つけることが、次のステップに進む上で重要です。

退職を引き留められた場合の対処法

退職を引き留められた際には、冷静かつ丁寧な対応が重要です。適切な対処法を確認しておきましょう。

退職理由を明確に伝える

退職を引き止められた際には、理由を明確に伝えることが重要です。具体的かつ明瞭な退職理由を示し、決意が固いことをアピールしましょう。「医療職として将来のキャリアのために新しい環境での経験が必要だと感じています」と、自己の成長を最優先している点を伝えます。

感情的にならず事実に基づいた理由を伝えると、職場に対して敬意を表しつつ、キャリアプランに合った理由を説明することができます。将来の目標や退職後の計画を話すことで、退職の意志が本気であることを明確に伝えましょう。

感謝の言葉を伝える

退職する際には、これまでの経験や機会に対して感謝の意を伝えることが大切です。上司や同僚への感謝の言葉を伝えることで、円滑な関係を維持しやすくなります。具体的な支援や指導に対して、感謝の言葉を誠実に伝えましょう。

一貫した態度を保つ

退職を引き止められた際に一貫した態度を保つことは、対話中の混乱や誤解を避け、スムーズに退職するために重要です。上司や同僚から引き止められた場合でも、自分の退職に対する決意を変えずに断固とした意思表示を行います。

一貫性のある言葉や説明を心掛け、自分の感情に左右されずに冷静に対応しましょう。退職の理由や意志が変わらないことを相手に繰り返し強調するのも効果的です。一貫した態度で、相手に自身の真剣な退職の意向をしっかりと伝えられます。

まとめ

助産師や看護師として退職時の意思を伝える方法やタイミングは重要です。適切な時期に、適切な方法で退職の意思を伝えることで、スムーズな退職ができます。

退職の意思を伝えるタイミングは以下を意識しましょう。

退職の意思を伝える際には、注意すべき点もいくつかあります。以下の内容に気をつけることで、スムーズな退職につながります。

ポイントを押さえて退職の意思を伝えましょう。職場での人間関係を良好に保ちながら円滑に退職を進められます。