2024.11.24更新
病院勤務の看護師の中には、介護施設への転職を検討しているものの、仕事内容がわからない方も多いでしょう。高齢化に伴い、介護施設での看護師の需要は増えています。ワークライフバランスを重視した働き方や、家庭との両立など個人の生活に合わせた選択が可能です。
本記事では、介護施設で働く看護師の仕事内容から、メリット・デメリット、向いている人の特徴まで詳しく解説します。記事を読めば、介護施設での看護師としての働き方をイメージでき、自身のキャリアプランに活かせます。定時退社が多く、需要も高いため、キャリアの選択肢の一つとして検討しましょう。
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介護施設で働く看護師の仕事内容
介護施設の看護師は、入居者の健康管理を中心にさまざまな業務を担います。介護施設で働く看護師の仕事内容を見てみましょう。
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入居者の健康管理
介護施設の看護師にとって、入居者の健康管理は最も重要な業務の一つです。毎日のバイタルサインのチェックを通じて、入居者一人ひとりの体調を把握し、変化があれば早期に対応します。体温や血圧、脈拍などの測定だけでなく、食事量や水分摂取量、排泄状況なども細かくチェックします。
通常の健康管理に加えて、褥瘡(床ずれ)の予防や処置、服薬管理も看護師の重要な役割です。医師の指示のもと、個々の入居者に合わせた投薬計画を立て、確実な服薬支援を行います。インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症対策も看護師が中心となって実施します。
入居者や家族の健康相談に対応し、不安を解消するのも重要な役割です。日々の観察と記録を通じて、入居者の健康状態を継続的にモニタリングし、異常の早期発見と予防に努めます。
入居者の日常生活のサポート
介護施設の看護師は、入居者が快適に過ごせるよう日常生活のサポートも行います。主な支援内容は以下のとおりです。
- 食事介助と栄養管理のサポート
- 入浴前後の健康チェックと介助
- 排泄支援と衛生管理
- 口腔ケアの実施と指導
- リハビリテーションの補助
日常生活のサポートは介護スタッフと協力しながら行います。食事の際は嚥下機能や姿勢を確認しながら、安全に食事ができるサポートが大切です。入浴時は血圧の変動に注意を払い、体調の変化に迅速に対応できるよう見守ります。
入居者の状態に合わせて、介護スタッフへ専門的なアドバイスを行うことで、質の高いケアが可能です。
医師の指示にもとづく医療行為
介護施設の看護師は、医師の指示にもとづいてさまざまな医療行為を行います。点滴や採血、褥瘡の処置など、医療的なケアが必要な場面では、看護師の専門的なスキルが重要です。医療行為として、傷の手当てや経管栄養、インスリン注射などを行います。
緊急時の対応も看護師の重要な役割です。入居者の容体が急変した場合は応急処置を行い、必要に応じて医師や救急隊へ連絡します。医療機関との連携を図りながら、入居者の安全を守る責任を担います。医療的な処置の記録や報告書の作成も確実に行うことも欠かせません。
医師が常駐していない施設では、看護師の迅速な判断が必要です。医療行為は必ず医師の指示のもとで行い、定期的に状態を報告して適切な治療方針を確認します。
介護スタッフとの連携
介護施設では、看護師と介護スタッフが協力して入居者のケアを行います。効果的な連携のポイントは以下のとおりです。
- 入居者の状態に関する情報共有
- ケアプランの作成と実施
- 緊急時の対応手順の確認
- 定期的なカンファレンスの実施
- 医療的知識の共有と指導
申し送りやカンファレンスを通じて、入居者の状態変化や注意点を共有します。介護スタッフからは普段の生活の様子や気になる変化について情報を得られ、看護師は医療的な観点からアドバイスを伝えます。両者の視点を組み合わせることで、入居者により良いケアの提供が可能です。
ターミナルケア
介護施設でのターミナルケアは、人生の最期を穏やかに過ごせるよう支援する重要な役割です。看護師は医師の指示のもと、痛みや苦痛の緩和に努めながら、入居者の尊厳を守ります。家族への精神的なサポートも大切な業務の一つです。
入居者一人ひとりの希望や価値観を尊重しながら、できる限り快適に過ごせるよう環境を整えます。家族とのコミュニケーションを大切にし、入居者の状態や変化について丁寧に説明します。看取りの時期が近づいた際は、家族と十分な話し合いを持ち、本人と家族の意向に沿った支援を行いましょう。
介護施設では医療機関とは異なり、生活の場での看取りを行うため、よりその人らしい最期を迎えられるよう配慮します。看護師は医療的なケアだけでなく、心理的・精神的なケアも含めた総合的なサポートを提供することが大切です。
看護師が働ける介護施設の種類
介護施設には種類が多く、看護師に求められる役割が異なります。主な介護施設の種類は以下のとおりです。
- 特別養護老人ホーム
- 有料老人ホーム
- 介護老人保健施設
- サービス付き高齢者向け住宅
- デイサービスセンター
施設ごとに必要とされる医療ケアのレベルや勤務体制が異なるため、ライフスタイルや希望する働き方に合わせて選択できます。各施設の特徴を詳しく見てみましょう。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、要介護3以上の高齢者を対象とする公的施設で、日常生活のサポートが中心です。医療依存度の高い方は入居できない場合もあります。入居者100名に対して3名以上の看護師配置が義務付けられており、日勤のみの勤務形態が一般的です。
看護師の主な業務は、入居者の健康管理や服薬管理、医療機関との連携などです。夜間の医療対応は基本的にオンコール体制で、緊急時には連絡を受けて対応します。看取りケアも行われることが多く、入居者と家族への精神的なサポートも重要な役割です。
医師は常駐していないため、体調の変化や緊急時には看護師の判断が必須です。介護スタッフと協力しながら、入居者の健康と安全を守る責任を担います。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、高齢者が食事や介護などのサービスを受けながら生活する民間の施設です。介護付きと住宅型があり、介護付きの場合は入居者30名に対して1名以上の看護師配置が必要です。30名を超えると、50名ごとに1名の追加配置が求められます。
看護師の仕事は健康管理や服薬管理が中心で、医療行為は少なめです。施設の方針によって看取りケアを行う場合は、医療依存度の高い入居者も担当します。多くの施設は日勤のみですが、24時間体制の場合は夜勤もあります。サービス業としての側面が強いため、入居者や家族への丁寧な対応と説明が必要です。
介護スタッフと協力して、質の高いサービスを提供します。
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、病院と在宅の中間施設として、医療と介護の両方のサービスを提供します。在宅復帰を目指す入居者が多く、リハビリテーションも重要な役割です。医師の常駐が義務付けられており、看護師は入居者100名に対して9名以上の配置が必要です。
看護師は24時間体制で医療ケアを提供するため、夜勤があります。点滴や経管栄養、褥瘡処置など、医療行為を行う機会が他の介護施設より多いのが特徴です。医師との連携も密接で、病院に近い働き方です。理学療法士や作業療法士など、多職種との協働も欠かせません。
入居者の要介護度は1~5までさまざまで、医療ニーズも異なります。個々の状態に応じた適切なケアを提供し、在宅復帰に向けた支援を行います。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、自立度の高い高齢者が生活する住宅型の施設です。生活相談や安否確認が基本サービスとなり、介護や医療のサービスは必要に応じて外部サービスを利用します。看護師の配置は施設の方針によって異なり、常駐する施設と訪問看護を利用する施設があります。
看護師の主な業務は、健康相談や定期的な健康チェック、緊急時の対応などです。医療行為は少なめですが、入居者の状態が変化した際の判断と適切な対応が求められます。多くの施設が日勤のみの勤務形態ですが、24時間体制の施設では夜勤もあります。
自立した生活を送る入居者が多いため、予防的な健康管理や早期発見が重要です。介護が必要になった際の相談対応や、適切なサービスの紹介も看護師の役割になります。
デイサービスセンター
デイサービスセンターは、在宅の高齢者が日帰りで利用する通所介護施設です。食事や入浴のサポート、レクリエーション活動などを提供し「通所介護」とも呼ばれます。利用者の要介護度は比較的低く、医療依存度の高い方は少ないのが特徴です。看護師は健康チェックや入浴可否の判断、服薬管理などを担当します。
医療処置を行う機会は少なく、緊急時の対応や体調変化への早期発見が主な役割です。日曜日が休みの施設が多く、夜勤もないため、子育て中の方や仕事と家庭の両立を目指す方に適しています。常勤の募集は少なめですが、パートや派遣での求人が多いのも特徴です。
利用者の送迎時に家族と顔を合わせる機会も多く、在宅での様子を聞き取ることで必要なアドバイスを提供します。
看護師が介護施設で働くメリット
介護施設で働く看護師には、病院とは異なるメリットがあります。看護師が介護施設で働くメリットについて詳しく見てみましょう。
定時退社が多い
介護施設では定時退社が多く、規則的な勤務が可能です。勤務時間と業務内容のポイントは以下のとおりです。
- 日勤のみの施設が多い
- 突発的な残業が少ない
- 勤務シフトが柔軟で予定が立てやすい
- 休暇を取得しやすい
- プライベートの時間を確保しやすい
病院と異なり、緊急入院や急な手術への対応がないため、計画的な業務遂行ができます。多くの施設が9~17時などの固定シフトを採用しており、規則正しい生活リズムを保てます。育児や介護など、家庭との両立を目指す看護師にとって働きやすい環境です。
需要の高い分野で働ける
高齢化に伴い、介護施設での看護師の需要は年々増加しています。医療ニーズの高い入居者が増加する中、看護師の役割は重要です。介護施設の数も増加傾向にあり、経験を積むことで職場の選択肢が広がります。看護師の配置基準が法律で定められているため、安定した雇用が期待できます。
施設の種類も多様で、自身の希望する働き方や環境を選びやすいのも特徴です。介護施設での経験は、地域包括ケアシステムの中で重要な役割を果たすスキルとして評価されます。需要の増加は、今後も見込まれる分野であり、長期的なキャリア形成が可能です。
入居者と長期的な関係が築ける
介護施設の看護では、以下のように入居者との長期的な関係構築が可能です。
- 継続的なケアによる深い信頼関係の構築
- 入居者の個性や生活習慣の理解
- 小さな変化に気づきやすい環境
- 入居者の家族との良好な関係の構築
- その人らしい生活の支援
介護施設は病院と異なり、短期間での退院がないため、じっくりと関係を築けます。入居者一人ひとりの性格や好み、生活リズムを理解することで、より適切なケアを提供できます。家族とも継続的なコミュニケーションを取ることができ、入居者を支える体制づくりがしやすい環境です。
看護師が介護施設で働くデメリット
介護施設で働く看護師には、いくつかのデメリットもあります。介護スタッフとの連携の難しさや、医療知識を更新する機会の少なさ、給与面での課題などです。看護師が介護施設で働くデメリットについて詳しく見てみましょう。
介護スタッフとの連携が難しい
介護施設では、介護スタッフとの連携において以下の課題があります。
- 医療と介護の視点の違い
- 職種間の役割分担の不明確さ
- 情報共有方法の統一性の欠如
- 緊急時の対応認識の差
- 教育背景による知識の差
病院では看護師が主導的な立場になることが多いですが、介護施設では対等な立場での協働が不可欠です。医療的な判断と介護の視点をうまく組み合わせ、入居者にとって最適なケアを提供する必要があります。定期的なカンファレンスや情報共有の仕組みづくりが重要です。
最新の医療知識を身に付ける場面が少ない
介護施設では、日常的な健康管理が中心となるため、最新の医療技術や知識に触れる機会が限られています。医療機器の使用頻度も少なく、高度な医療処置を行う場面が少ないのが現状です。研修や勉強会の機会も病院と比べると少なめです。
医療の進歩に追いつくためには、自己学習や外部の研修への参加など、積極的な取り組みが欠かせません。急変時の対応や最新の治療法については、定期的な知識のアップデートが重要です。病院での経験がない場合、緊急時の判断に不安を感じやすいためです。専門性を維持・向上させるためには、個人の努力が求められます。
専門誌の購読や学会への参加など、自主的な学習が大切です。
給与が病院勤務よりも少ない傾向がある
介護施設で働く看護師の給与に関する特徴は以下のとおりです。
- 夜勤手当や残業代が少ない
- 医療技術手当が付きにくい
- 昇給の幅が限られる
- 施設の規模による給与差
- キャリアアップの機会が少ない
病院勤務と比べて基本給は同程度でも、夜勤や残業が少ないため実収入は減少します。高度な医療行為が少ないため、技術手当などの諸手当も限られます。ただし、働き方や施設によって待遇は大きく異なり、24時間体制の施設や大手法人が運営する施設では、高待遇な場合も多いです。
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介護施設勤務に向いている看護師の特徴
介護施設での勤務は、高齢者との関わりを大切にし、介護スタッフと協力しながら働ける看護師に適しています。介護施設勤務に向いている看護師の特徴を見てみましょう。
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ライフスタイルに合った働き方をしたい
介護施設は、個人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。子育てや介護との両立を目指す看護師も多く、プライベートの時間を確保しやすい環境です。夜勤がない施設も多いため、規則正しい生活リズムを保てます。パートタイムやフルタイム、日勤専従など、多様な勤務形態から選択できます。
育児休暇や介護休暇の取得もしやすく、長期的なキャリア継続が可能です。ブランクがある看護師の職場復帰にも適しており、経験を活かしながら無理のないペースで働き始められます。
コミュニケーション能力が高い
介護施設での看護業務では、コミュニケーション能力が重要です。求められるコミュニケーションスキルは以下のとおりです。
- 高齢者との円滑な会話力
- 家族への丁寧な説明能力
- 多職種との効果的な情報共有
- 傾聴と共感の姿勢
- 状況に応じた柔軟な対応力
認知症の方とのコミュニケーションには特別な配慮が必要で、言葉だけでなく表情やしぐさからも思いを読み取る力が求められます。介護スタッフや他職種との連携も重要で、専門的な内容をわかりやすく伝える能力も必要です。
高齢者の介護やケアに関わりたい
高齢者の介護やケアに興味がある看護師にとって、介護施設は理想的な職場です。日々の健康管理から看取りまで、人生の最期までその人らしく生活できるよう支援します。医療的なケアだけでなく、生活全般のサポートを通じて、入居者の生きがいや喜びを支えられます。
高齢者看護の専門性を活かしながら、一人ひとりに寄り添ったケアを提供できるのも魅力です。認知症ケアや終末期ケアなど、専門的な知識とスキルを活かせる場面も多くあります。長期的な関わりの中で、入居者の変化や成長を見守れることもやりがいの一つです。
地域包括ケアシステムの中で重要な役割を担う介護施設で、看護職として専門性を発揮できます。高齢者医療への関心が高く、じっくりと関わりながらケアを提供したい看護師に適した環境です。
まとめ
介護施設での看護師の役割は、健康管理や日常生活の支援、医療行為まで多岐にわたります。定時退社が多く、ワークライフバランスの取りやすい職場です。高齢化社会の進展に伴い、需要は今後も高まると予想されます。医療現場とは異なる課題もあります。
しかし、入居者と長期的な関係を築きながら、その人らしい生活を支援できるやりがいのある職場です。介護施設での勤務を検討している看護師は、自身の希望する働き方や環境に合わせて、施設を選択しましょう。