2024.11.4更新
助産師は病院や診療所に勤務し、妊娠から出産、産後ケアまで母子のサポートを行います。不妊治療にも携わる、女性の健康管理のスペシャリストです。
この記事では、助産師の働く場所や働き方について詳しく説明します。記事を読むことで、理想の職場や働き方が見つかるでしょう。
助産師になりたい方や転職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
助産師とは
助産師は妊娠や出産、産後の母子やその家族に対し、専門的なケアを提供する医療職です。出産前後の健康管理や指導、サポートを行い、母親と赤ちゃんの健康を守るのが仕事です。
助産師になるには看護師資格を取得する必要があります。看護師資格を取得した後、1年以上の教育課程を修了し、助産師国家試験を受けます。合格すれば、助産師として就業可能です。
就業先は病院や診療所をはじめ、母子健康センターや保健所など多岐に渡ります。地方では人材が不足していることもあり、今後ますます活躍の場が広がる職業といえます。
助産師の働く場所の種類と役割
助産師の働く場所は以下のとおりです。
- 病院・クリニック
- 助産院
- 産後ケアセンター
- 保健所
- 教育機関
- 訪問看護ステーション
病院・クリニック
病院やクリニックは、助産師にとって最も一般的な就職先であり、妊娠や出産、育児に関する幅広い業務に携わる職場です。勤務地や規模、診療科などにより仕事内容は異なりますが、いずれも命に関わる重要な役割を担っています。
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病院やクリニックにおける妊婦健診と保健指導は、妊婦と胎児の健康を守るために不可欠です。助産師は妊婦健診と保健指導を通して、妊婦と胎児の健康状態を把握し、 健全な妊娠や出産、育児をサポートします。
妊娠期の状態を管理し、妊婦の体調や精神状態をサポートします。医師の指示に従い、必要な処置を補助することも重要な仕事の1つです。分娩方法についてのメリットやデメリットを説明し、妊婦の希望に沿ったバースプランを選択できるようサポートします。
産後は、母親の育児に関する悩みや不安に丁寧に耳を傾け、個々の状況に合わせたアドバイスを提供します。
助産院
助産院はアットホームな雰囲気で、1人ひとりに寄り添ったケアの提供が可能です。仕事内容は母親の体調管理や出産指導、母乳育児支援、育児相談など多岐にわたります。
助産師は妊娠や出産に関する専門知識を生かし、母親のニーズに合わせたケアを行います。妊娠初期から産後まで、一貫したサポートを受けられるのが特徴です。病院と比べて小規模で親密な環境で、リラックスした雰囲気でケアを受けられます。
助産師は母親の体調や胎児の状態を継続的に観察し、異常があれば医師に連絡するなど、安全な出産をサポートします。分娩時の痛みや不安に対して適切なアドバイスや体のマッサージ法、リラックス法などを指導し、母親を支えます。
助産師の仕事は、産後の母親と新生児に対する身体的ケアや精神的サポート、育児指導など、包括的なケアの提供です。産後の回復状況の確認や母乳育児のサポート、産後うつの予防と早期発見などのケアを行います。助産院は医師が常駐していない施設のため、正常経過の妊婦のみ出産できます。
産後ケアセンター
産後ケアセンターは出産後の母親が体力を回復し、新生児の世話や育児のサポートを受けられる施設です。産後ケアセンターでは、専門の助産師や看護師が24時間体制で支援しています。母乳育児のアドバイスや赤ちゃんのお世話の方法を教えながら、母子の健康状態を観察します。
主に出産後の育児支援をサポートするため、出産前のケアや出産時の立ち会いはありません。産後の身体回復を促すマッサージや体操などのプログラムも提供しています。
保健所
保健所での助産師の役割は、地域の母子保健を支えることです。妊娠中の女性へ健康相談やアドバイスをします。自治体により助産師に電話やWeb、LINEなどで育児相談が可能です。病院やクリニック、助産院のような出産時の立ち会いはありません。保健所や保健センターで正規採用される助産師は、地方公務員扱いです。
教育機関
助産師は看護大学や看護学校の講師として、未来の助産師の育成を担う重要な役割があります。豊富な知識と経験に基づいた講義などを通して学生の専門性を高め、質の高い助産ケアを提供できる人材育成を目指します。
具体的な仕事内容は以下のとおりです。
- 助産学の講義を担当し、妊娠や出産、産後ケアに関する専門知識を教える
- 母性看護学実習の指導者として学生の臨床実習をサポートする
- 助産に関する研究を行い、成果を論文や学会などで発表する
- 学生の学習や生活に関する相談に応じサポートを行う
- 学生の就職活動に関する相談に応じ、就職活動をサポートする
看護教員になるためには看護師や保健師、助産師いずれかの実務経験が3年以上かつ、大学または大学院にて教育科目の履修が必要です。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションに助産師が勤務しているケースが増えています。医師の指示のもと、病院と連携を図りながら、助産師が妊婦や産後女性の自宅を訪問するサービスです。母乳の分泌や乳腺炎などのトラブルに対するケアや、育児相談、離乳食相談などの相談ができます。
助産師の働き方
助産師はライフスタイルやキャリアプランに合わせ、主に以下3つの働き方で勤務可能です。
- フルタイム
- 非常勤
- パートタイム
フルタイム
フルタイムで働く助産師は基本1日8時間、週40時間以上勤務します。労働形態は日勤と夜勤、休日勤務を含むシフト制が一般的で、助産師同士でローテーションを組んで24時間対応します。
フルタイム雇用の場合、安定した職場での勤務ができ、福利厚生や健康保険も利用可能です。職場によってはキャリア形成や研修もあるため、助産師としてのスキルや経験を高められます。
助産師としての専門性を高めることは、技術力を上げ、キャリアを積むことにも役立ちます。フルタイム勤務は激務ではありますが、向上心が高い助産師にとって大きな魅力です。
非常勤
非常勤の助産師は、限定した時間および日数で働けます。非常勤の形態では、契約で決められた期間内のみ働くのが一般的です。
個人のライフスタイルや家庭の事情に合わせて、勤務時間や日数を調整できます。寮制など住宅補助を取り入れている病院も多く、遠方への就業も可能です。
優秀な助産師はフルタイムへの勧誘や再雇用も検討されるため、キャリアアップのチャンスもあります。しかし、フルタイム雇用と比べると福利厚生や健康保険に関しては限定される点に注意しましょう。
パートタイム
パートタイムの助産師は週に1日、数時間から勤務可能です。勤務時間や曜日を自由に設定でき、家庭や個人のライフスタイルに合わせやすいメリットがあります。
パートタイム助産師の平均時給は看護師、保健師と比較すると、3職種でもっとも高給です。
職種 | 時給 |
助産師 | 2,355円 |
保健師 | 2,153円 |
看護師 | 1,849円 |
勤務地は病院やクリニック、助産院などさまざまです。フルタイムや非常勤に比べて、責任やストレスが少ないことがほとんどです。しかし、給与はフルタイム勤務より少額になる点に注意しましょう。
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助産師の労働条件
助産師の労働条件について、以下の3項目に分けて解説します。
- 労働時間
- 給与水準
- 福利厚生
労働時間
フルタイムの助産師は、シフト制での勤務が一般的です。病院や診療所は緊急対応のために、24時間体制で二交代制か三交代制で運営されており、夜勤や休日勤務が頻繁に発生します。
具体的には8~9時間の三交代制が基本であり、以下のような労働時間で勤務可能です。
- 日勤:出勤8~9時、退勤16~17時
- 準夜勤:出勤16~17時、退勤0~1時
- 深夜勤:出勤0~1時、退勤8~9時
緊急事態や業務の繁忙期に当たると、残業が発生する場合もあります。9時間以上の長時間勤務になる場合もあり、心身の負担が大きい仕事であることに違いありません。
ただし、パートタイムや非常勤の選択肢もあるため、家庭や個人の事情に合わせて柔軟に働けます。
給与水準
助産師の平均年収は、フルタイム勤務でおよそ400万〜700万円です。年収は経験年数や勤務地によって大きく異なるため、自身が勤めたい業務形態について詳しく知ることが重要です。都市部と地方では、給与水準に差がでる場合もあります。
新人助産師の平均年収は約400万円から始まり、経験を積んでいくことで給与は上昇します。50代のベテラン助産師になると平均700万円手前まで跳ね上がるため、将来性も高いです。
夜勤や休日出勤には手当が支給され、収入が底上げされます。助産師にのみ支給される以下のような手当もあり、看護師と比較して給与は高いです。
- 資格手当
- 分娩手当
- 待機手当
助産師の給与は女性限定の職種の中でも高く、さらなるキャリアアップも狙えます。将来を考える女性にとっては、魅力的な職業といえます。
福利厚生
助産師は、福利厚生が充実しています。助産師が受けられる主な福利厚生は、以下のとおりです。
- 健康保険
- 厚生年金
- 賞与
- 産前産後休暇・育児休暇
- 通勤・住居手当
- 資格手当
- 退職金制度
助産師の退職金の相場は勤続10年で約400~600万円、勤続20年で約1,300~1,500万円です。新卒者が中小企業に定年まで勤めた場合の退職金相場は、およそ1,000万円前後です。比較すると、かなり高いことが分かります。
福利厚生は就業中・退職後を問わず、生活の安定に役立ちます。保険制度も充実しているので、病気やけがをしても医療費の負担軽減が可能です。
福利厚生の充実は仕事のモチベーションにもつながるため、長く助産師を続けていく上での助けとなります。
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助産師のキャリアアップ
助産師としてキャリアを積むためには、大きく分けて以下の4つのルートがあります。
- 職場で出世する
- 専門性を極める
- 開業する
- 海外で働く
職場で出世する
職場で出世することは、もっともシンプルなキャリアアップ方法です。助産師は基本的に就業年数が多いほど給与が高い傾向にあるため、最初の数年はとにかく仕事と勉強を頑張りましょう。
コミュニケーションスキルを持つことは、仕事をする上で1番重要です。同僚や上司との雑談・情報交換の中に、キャリアアップのカギがあるからです。職場固有のルールや方針を早急に把握することも大切です。
コミュニケーションが上手くなればチームワークが向上し、職場全体の雰囲気が良くなります。自身が評価されやすい環境を構築することは、キャリアアップに欠かせません。
日々勉強し、上司からの適切なフィードバックを受け入れることも重要です。真摯な姿勢を見せることは、将来的に役立つ人脈を作ることにもつながります。
専門性を極める
専門性を極めることは、直接的なキャリアアップや昇給につながります。専門知識と技術の向上は、助産師としての仕事の質に直結するためです。
専門資格を取得すれば、特定の分野での専門知識を証明できます。助産師には以下のような追加で取得できる資格があり、自身の技術力の証明に役立ちます。
- 認定看護師
- 専門看護師
- アドバンス助産師
- 産後ケアリスト
- 産後ケアエキスパート助産師
医療は日々進歩しているため、最新の知識や技術の学習は必須です。継続的に学会や専門団体に参加し、情報収集や人脈づくりを積極的に行いましょう。
専門分野に特化したセミナーや講座を受講すれば、スキルの向上に役立ちます。ある程度のキャリアを積んだら、指導者やメンターとして活動するのもおすすめです。自身の権威を証明するだけでなく、他者への助けにもなります。
» キャリア選択に役立つ!助産師の自己分析の方法
»アドバンス助産師になる方法
開業する
助産師として開業することは、キャリアアップにおいてもっとも直接的な手段です。ただし、開業には助産師とは異なるスキルが必要な点に注意しましょう。開業するためのステップは、以下のとおりです。
- 開業資金の準備
- ビジネスプランの作成
- 立地の選択
- 施設設計・準備
- 開業届の提出
- スタッフの雇用・トレーニング
- 施設の管理・維持
- 自身の知識・技術のアップデート
開業には莫大な時間とお金を要するため、助産師としてのある程度のキャリアが必須です。今の職場で人脈や技術を高めることと、資金を貯めることに集中しましょう。
開業には法的な手続きが多く要求されるので、自身だけでは対応できない部分が出てきます。必要に応じて弁護士や税理士など、専門家に頼ることも検討してください。
開業後も専門知識・技術のアップデートは忘れずに行いましょう。医療は日々進歩するため、新しい情報を得続けることで、質の高いサービスを提供できます。
海外で働く
現在ではオーストラリアを始めとした海外で働きたい助産師が増えています。海外で働くことには多くの魅力があり、給与水準も高くなる傾向があります。
海外で助産師として働く際に特に難関となるのは、国ごとの助産師資格を得ることです。多くの国では、その国の大学に留学して助産師資格を得る必要があります。
海外で働くには国ごとの言語を覚えなくてはいけないので、コミュニケーションの難易度も高いです。現地の医療制度や文化を理解するために、言語学習はもっとも重要なタスクといえます。
手続きや生活環境の整備がすべて完了すれば、現地での助産業務が可能です。海外での業務は収入のアップのみならず、キャリアアップにも大きな影響を与えます。
海外でのキャリアアップは帰国後の再就職や資格認証にも大きなメリットとなるため、将来性の高さも魅力です。
» 成功率がアップする!助産師や看護師の転職活動の方法
まとめ
助産師は、妊婦に対する専門的な産前産後のケアが仕事です。助産師は病院や診療所、助産院など、多様な環境で活躍できます。
フルタイムからパートタイムまで柔軟な働き方を選べるので、個々の生活に合わせた仕事ができます。自身のライフプランに合わせて、柔軟な変更ができる点も魅力です。
仕事のやりがいも大きく、命の誕生に立ち会うことや母子の成長から満足感が得られます。助産師は社会的に大きな貢献ができる、すばらしい職業です。
»徹底比較!助産師におすすめの転職エージェント