2024.11.3更新
スキルアップを考え専門分野に興味を持つ看護師は多いです。特定の看護分野に特化した専門看護師になることも、スキルアップをする方法の一つです。この記事では、専門看護師資格の取得方法や活躍の場、専門看護師と認定看護師の違いを詳しく解説します。
記事を読むことで、専門看護師を目指す具体的なステップが明確になり、キャリアアップに役立つ知識が得られます。
» 看護師の種類の違いは?各職種の役割や働く場所・業務内容を解説
専門看護師とは特定の分野に特化した看護師のこと
専門看護師は、特定の看護分野で高度な知識と技術を有し、質の高いケアを提供する看護師です。特定の分野に特化しており、患者のニーズに応じた専門的な介入を行えます。専門看護師の専門性は、患者と医療チーム全体の支援となり、看護の質の向上に大きく貢献することが可能です。
専門看護師について、以下の2点を解説します。
- 14の専門看護分野
- 専門看護師が働く場所
14の専門看護分野
専門看護師には、14の専門分野があります。自身の興味や強みに応じてキャリアを築きましょう。14の専門看護分野は、以下のとおりです。
- がん看護:がん患者と家族のQOLを重視し、身体的・精神的苦痛に対する高水準の看護を提供する。
- 精神看護:精神疾患患者や一般病院での心のケア(リエゾン精神看護)を含む高水準の看護を提供する。
- 地域看護:産業保健、学校保健、在宅ケアなど地域の保健医療福祉に貢献する看護を行う。
- 老人看護:高齢者施設で認知症や嚥下障害などの複雑な健康問題を抱える高齢者に対し、QOL向上を目指した看護を提供する。
- 小児看護:子どもの成長と発達を支援し、他の医療スタッフと協力して療養生活をサポートする。
- 母性看護:周産期の母子や女性のライフサイクル全般にわたる健康支援を行う。
- 慢性疾患看護:生活習慣病の予防や慢性疾患の管理、健康増進、療養支援を行う。
- 急性・重症疾患看護:緊急性の高い患者に集中的な看護を提供し、患者や家族の支援や医療チームの調整を行う。
- 感染症看護:感染予防と対策、感染症患者への看護を行い、施設や地域の感染症対策に従事する。
- 家族支援:患者と家族を支援し、セルフケア能力を高めるための高水準な看護を提供する。
- 在宅看護:在宅療養者と家族が日常生活を維持できるよう支援し、ケアシステムの構築や連携を促進する。
- 遺伝看護:遺伝的課題に関する支援や世代を超えた医療体制の構築に貢献し、ゲノム医療の発展を支える。
- 災害看護:災害時に適切な看護を提供し、多職種と連携して減災・防災体制の構築に取り組む。
- 放射線看護:放射線の影響を踏まえ、長期的な健康課題に対応する看護を行い、放射線診療や被ばく低減の対策を提供する。
以上の専門分野を学んで技術を身に付けると、看護師としての知識が深まり、より高品質なケアを提供できます。
»日本看護協会、専門看護師(外部サイト)
専門看護師が働く場所
専門看護師は高度な知識と技術を生かし、多様な医療や福祉の場で重要な役割を果たしています。主な勤務地は、以下のとおりです。
- 総合病院
- 専門病院
- クリニック
- 地域医療機関
- 診療所
- 大学病院
- 緩和ケア施設
- 在宅医療
- 介護施設
- 公衆衛生関連施設
- 教育機関(看護学校や大学)
- 研究機関
- 企業の産業保健施設
勤務地によって必要なスキルや経験は異なりますが、どの場所でも専門性が高く評価される可能性が高いです。
企業の産業保健施設で働くと、従業員の健康管理という新たな分野での活躍が期待されます。国際的な医療支援活動への参加も、専門看護師にとって大きな機会です。
専門看護師になるための方法
専門看護師になる方法は、以下のとおりです。
- 看護師免許を取得する
- 5年以上の実務経験を積む
- 看護系の大学院修士課程を修了する
- 認定試験に合格する
看護師免許を取得するだけでは、専門看護師にはなれません。大学院で専門的な教育課程を修了したうえで、認定試験に合格する必要があります。
看護師免許を取得する
看護師免許を取得するには、専門学校や看護大学、看護短期大学で看護学を学ぶ必要があります。教育期間は、専門学校では3年間、大学では4年間です。教育を終えた後に、国家試験の合格が必須です。国家試験は年に1回実施され、筆記試験を含みます。試験に合格すると、厚生労働大臣から正式に看護師免許が授与されます。
取得した看護師免許を持つと、医療機関や介護施設などで看護師として働くことが可能です。
5年以上の実務経験を積む
専門看護師になるには、5年以上の実務経験が必要です。病院やクリニック、介護施設などのさまざまな医療現場で勤務を行い、幅広い知識と技能を身に付ける必要があります。5年間の実務経験を通じて、特定の看護技術や症例に関する知識を深めることが可能です。
患者とのコミュニケーション能力やチームでの協調性も養われます。コミュニケーション能力や協調性は、専門看護師として高度な専門性を発揮するうえで重要なスキルです。5年以上の実務経験は、専門的な知識と技術だけでなく、患者や医療スタッフと協力して働くための基盤を作ります。
看護系の大学院で修士課程を修了する
看護系の大学院での修士課程を修了すると、専門的な知識と技術が深まり、臨床現場で求められる高度な看護を提供できます。大学院のプログラムは、専門分野ごとに特化しており、学べる内容は幅広いです。病態生理学や看護理論、研究方法など、多岐にわたる分野を2年間で学べます。
学生は実践的なクリニカルスキルを磨くため、実習やケーススタディに多くの時間を費やします。論文や最終プロジェクトの完成は卒業要件です。個々の研究を深めることも重要です。
認定試験に合格する
認定試験に合格するには、対象となる専門分野に応じた準備が必要です。各専門看護分野で異なる試験内容が設定されており、筆記試験だけではなく実技試験が含まれる場合もあります。試験の合格率は50~70%で、難易度は専門分野によって異なります。
専門の研修プログラムへの参加や過去問の徹底的な分析、解答練習が成功の鍵です。合格後は専門知識をアップデートするための定期的な研修や、一定期間ごとの更新試験があり、継続的な学習が必要です。
専門看護師と認定看護師の違い
専門看護師と認定看護師は、看護の専門性を高める資格ですが、取得方法や役割が違います。専門看護師と認定看護師の違いについて、以下の3点を解説します。
- 資格取得難易度
- 求められる役割
- 専門分野
以上の違いを理解して、看護師として自分のキャリアパスを考えるうえで参考にしてください。
» 認定看護師になるには?メリットや、なるための費用を解説
資格取得難易度
専門看護師の資格取得は、認定看護師の資格に比べて難しいです。専門看護師になるには、看護系の大学院で高度な教育課程を修了し、認定試験に合格する必要があります。大学院での学習は、専門的な知識が求められるだけでなく、学問の深さも要求されます。
専門看護師の認定試験は実技と筆記があり、どちらも高い専門性と技術が必要です。資格を維持するには、定期的な研修や再認定試験への合格が必須で、継続的な学習と実務経験が不可欠です。専門看護師は難易度が高いため、資格取得で得られる専門性と信頼が高いと言えます。
認定看護師は、専門研修を受けた後に評価試験や実技試験に合格する必要があり、試験の合格率は90%以上です。
求められる役割
専門看護師は、医療の質を向上させる重要な役割を担います。専門看護師は医療チーム内での意見提供や患者と患者の家族への教育や相談業務を行います。専門看護師は臨床研究に参加し、看護実践で研究結果を提供しなければなりません。看護政策やプログラム開発に関与すると、看護職全体の質の向上にも寄与します。
認定看護師は、臨床現場で即戦力として特定の技術や知識を生かした看護の提供が求められています。専門看護師は多岐にわたる専門的な業務を担い、ケアの質の向上だけでなく、医療全体の質の改善にも貢献することが可能です。
専門分野
専門看護師は、がん看護や地域看護などの14の専門分野があります。専門看護師は看護だけでなく、患者の家族ケアや人材育成、研究などさまざまな場面で活躍可能です。認定看護師は、約19の専門分野があり、より広範な現場のニーズに応えています。看護のエキスパートとして、現場での活躍が期待されます。
専門看護師になるメリット
専門看護師になるメリットは、以下のとおりです。
- 質の高い看護を提供できる
- 活躍の場が広がる
- 給料がアップする
- 指導・教育する役割を担える
専門看護師になると、高い給料が期待できるだけでなく、多様な職場で活躍でき職場全体の看護の質の向上に貢献できます。やりがいのある仕事です。
質の高い看護を提供できる
専門看護師になると、質の高い看護を提供できます。専門看護師が習得する知識と技術が、広範囲にわたるためです。専門看護師は特定の疾患や患者の状態に応じて、最適なケアプランを立て、実行する能力があります。専門看護師は、最新の医学知識にもとづく治療サポートを提供でき、緊急時の迅速な対応も可能です。
患者だけでなく患者の家族に対しても、適切な相談とアドバイスを行えるため、治療の成果の向上につながります。
活躍の場が広がる
専門看護師になると、多岐にわたる分野での活躍が可能です。専門看護師の活躍の場は、以下のとおりです。
- 病院やクリニックでより専門的な治療やケアに従事する
- 大学や研究機関での研究活動に参加できる
- 教育機関での講師や指導者として活動する機会が増える
- 地域医療や在宅医療でのリーダーシップを担える
- 国際的な活動やプロジェクトに関わるチャンスが拡大する
専門看護師になると、医療現場内外で幅広い活動ができます。それぞれの場で専門知識を生かし、多大な影響を与えることが可能です。
給料がアップする
専門看護師になると給料がアップします。専門看護師が持つ高度な専門知識と技術が、医療現場で高く評価されるためです。専門看護師は一般の看護師よりも高い専門性と技術を有しており、給与水準も専門性と技術に応じて高い設定なことが多いです。
病院や医療機関では質の高い看護サービスを提供するため、専門看護師を積極的に採用する傾向があります。良い給与や待遇を提示し、優秀な専門看護師を確保しようとするケースが見られます。専門看護師は管理職や特定の専門的な役割に就く場合が多いです。管理職や専門的な役割は通常、高い給料が支払われます。
継続的な教育と実務経験を積むと、よりキャリアアップが期待でき、キャリアアップに伴う給料の増加を見込むことが可能です。
指導・教育する役割を担える
専門看護師は、保有する高度な知識と技術を生かし、教育者としての役割も担います。新人看護師や看護学生の臨床スキル向上を目指す実務教育に貢献可能です。教育プログラムの開発や運営にも携われ、活躍が期待されます。専門看護師は継続教育のプログラムを通じて、専門技術の指導も行います。
専門技術の指導により、次世代の看護師へ知識と技術が継承され、看護の質の向上に貢献可能です。
専門看護師になるときの注意点
専門看護師になるときの注意点は、以下のとおりです。
- 学士の資格が必要になる
- 働きながらの資格取得が難しい場合がある
- 5年ごとに更新審査を受ける必要がある
専門看護師としてキャリアを築くには、十分に準備し継続的な学習が大切になります。
学士の資格が必要になる
専門看護師になるには、学士の資格を取得しなければなりません。学士の資格は、多くの専門的なポジションや進学先において、入学や応募の基本条件です。学士の資格が必要なのは、専門看護師として必要とされる高度な知識や技術を学ぶために、ある程度の基礎知識が必須だからです。
学士号を持つと、より高度な専門教育を受けられます。
働きながらの資格取得が難しい場合がある
専門看護師は、働きながら資格を取得するのが難しいです。時間管理の難しさや学業と仕事のバランスを取る必要があるためです。勉強時間の確保が大きな課題となります。多くの場合、勤務後の限られた時間に勉強しなければならず、疲労やストレスの蓄積が懸念されます。
資格取得には、職場でのサポートシステムの充実や柔軟な勤務体制が必要です。働きながらの資格取得は多くの挑戦を伴いますが、適切な対策とサポートがあれば目標は達成できます。
5年ごとに更新審査を受ける必要がある
専門看護師は、資格を維持するために5年ごとの更新審査が必要です。更新審査は、専門知識と技術を最新の状態に保つために重要です。更新審査では、過去5年間の実務経験や研修への参加記録が評価されます。専門看護師は日常の業務でも、常に学び続けなければなりません。
審査に合格しない場合、資格を失うリスクがあるため注意しましょう。更新審査の基準や方法は認定機関によって異なるため、所属する機関のルールを理解し、十分な準備が大切です。
まとめ
専門看護師として活躍するには、看護師免許を取得した後に、最低5年の実務経験を積む必要があります。看護系の大学院での修士課程を修了し、認定試験に合格しなければなりません。専門看護師は認定看護師とは異なり、より高度な医療の提供や教育、指導の役割も担う重要なポジションです。
専門看護師の資格を維持するには、5年ごとの更新審査が必須です。専門看護師は質の高い看護を提供でき、キャリアや給料のアップも期待できます。専門看護師として成功するには、適切な準備と対策が重要です。