2024.11.2更新
助産師は新しい命の誕生に立ち会う尊い職業です。仕事内容から助産師が高収入と思われていますが、実際の年収がわからない方がほとんどです。
本記事では、助産師の平均年収や年収に影響を与える要因、年収アップの方法について詳しく解説します。助産師への転職を考えている人はもちろん、すでに助産師として働いている方にとっても参考になる情報をお届けします。
助産師の平均年収
厚生労働省のデータによると、助産師の平均年収は約584.2万円です。日本の全職種平均年収(約443万円)と比べてかなり高い水準です。助産師の年収内訳は以下のようになっています。
- 月収:約39.9万円
- 賞与:約105.8万円
- 年収:約584.2万円
上記はあくまで平均値であり、実際の年収はさまざまな要因によって大きく変動します。次に以下のさまざまな観点から助産師の年収を紐解いていきましょう。
- 地域別
- 働き方別
- 経験年数別
- 規模別
- 年齢別
地域別
助産師の年収は地域によって大きく異なります。年収が高い都道府県は下記のとおりです。
- 埼玉県:約880万円
- 和歌山県:約696万円
- 山口県:約692万円
- 香川県:約692万円
- 北海道:約650万円
年収が低い都道府県は次のようになります。
- 群馬県:約395万円
- 大分県:約446万円
- 岡山県:約468万円
- 福島県:約480万円
- 新潟県:約483万円
上記の数字から、地域によって最大387万円もの差があります。年収に差が出る理由は地域の生活コストや医療機関の規模、助産師の需要と供給のバランスなどです。
働き方別
助産師の年収は、勤務先や勤務形態によっても大きく変わります。施設形態別の平均年収は下記のとおりです。
- 病院:約450〜550万円
- クリニック・診療所:約400〜500万円
- 美容クリニック:約450〜500万円
- 治験関連企業:約400〜500万円
- 一般企業:約400〜450万円
- 保育施設:約330〜550万円
- 訪問看護ステーション:約350〜450万円
- 介護施設:約300〜330万円
勤務形態別の平均年収は以下のとおりです。
- 常勤(二交代制):約450〜550万円
- 常勤(三交代制):約430〜550万円
- 夜勤なし:約350〜500万円
- 夜間専従:約450〜600万円
上記の数字から、勤務先や勤務形態によって年収に大きな差が出るとわかります。特に夜勤の有無が大きな影響を与えます。
» 助産師の働き方と働く場所の基礎知識
経験年数別
助産師の年収は、経験年数に応じて上昇するのが一般的です。以下は経験年数別の平均年収です。
経験年数 | 平均年収 |
---|---|
0年 | 約353万円 |
1〜4年 | 約444万円 |
5〜9年 | 約474万円 |
10〜14年 | 約531万円 |
15年以上 | 約614万円 |
上記の表から、経験を積むにつれて着実に年収が上がっていくことがわかります。特に15年以上のベテラン助産師になると、600万円を超える高い年収を得られる可能性が高いです。
規模別
助産師の平均年収は勤務先の規模によっても異なります。以下が規模別の平均年収です。
勤務先規模 | 平均年収 |
---|---|
1,000人以上(大規模病院) | 約543万円 |
100~999人(中規模病院) | 約545万円 |
10~99人 | 約580万円 |
上記の表から、病院の規模が大きいほど年収が高いわけではないとわかります。むしろ、規模が大きいほど助産師の需要と比例して年収が低下しているとも見れます。小さな病院は在籍する助産師の数が少ないため、業務負担が増加しやすい代わりに年収が上がりやすいです。
年齢別
助産師の年収は年齢によっても変動します。以下が年齢別の平均年収です。
年齢 | 平均年収 |
---|---|
20~24歳 | 約410万円 |
25~29歳 | 約496万円 |
30~34歳 | 約537万円 |
35~39歳 | 約562万円 |
40~44歳 | 約644万円 |
45~49歳 | 約637万円 |
50~54歳 | 約698万円 |
55~59歳 | 約593万円 |
60~64歳 | 約511万円 |
65〜69歳 | 約524万円 |
70歳〜 | 約386万円 |
上記の表から、助産師の年収は経験年数に応じて上昇し、50代前半でピークを迎えることがわかります。50代後半から徐々に減少するのは、管理職を離れる人が増えることや、夜勤の回数が減ることなどが原因です。20代から30代前半にかけては、結婚や出産などのライフイベントの影響で、年収の伸びが緩やかになります。
助産師の年収構成と手当
助産師の年収が高くなる要因にはさまざまな手当の存在があります。主な手当は以下のとおりです。
- 分娩介助手当
- 夜勤手当
- 住居手当
- 通勤手当
- 残業手当
分娩介助手当
分娩介助手当は、助産師が分娩に立ち会った際に支給される手当です。一般的に1回につき1万円程度支給されることが多く、月に複数回の分娩に立ち会うことで、かなりの額となります。オンコール(待機)の際にも数千円程度の手当が付きます。分娩介助手当は助産師特有の手当であり、年収を押し上げる大きな要因です。
» 助産師の仕事内容と役割を解説!
夜勤手当
夜勤手当は、夜間の勤務に対して支給される手当です。一般的に1回の夜勤につき5,000円程度が支給されます。助産師の場合、月に4〜8回程度の夜勤があることが多いため、月3〜4万円程度の夜勤手当が付くことになります。夜勤手当についても助産師の年収を大きく押し上げる要因です。
住居手当・通勤手当・残業手当
「住居手当・通勤手当・残業手当」といった手当は、助産師に限らず多くの医療機関で支給されています。金額は施設によって異なりますが、住居手当と通勤手当はそれぞれ月5,000円程度支給されることが多いです。
残業手当は実際に残業した時間に応じて支給されます。助産師の場合、急な分娩や緊急対応などで残業が発生する場合が多いため、残業手当も年収に大きく影響します。手当の種類や金額は勤務先によって大きく異なるため、就職や転職の際には注意深く確認することが重要です。
福利厚生が充実している勤務先では、家族手当や育児手当、資格取得手当などが支給されることもあります。
看護師と平均年収を比較
助産師は看護師の資格を持っていることが前提となる職業です。以下に、助産師と看護師(正看護師、准看護師)、保健師の平均年収を比較した表を示します。
職種 | 平均年収 |
---|---|
助産師 | 約584.2万円 |
正看護師 | 約507.4万円 |
保健師 | 約481.3万円 |
准看護師 | 約418.2万円 |
上記の表を見ればわかるとおり、助産師の年収が最も高いです。准看護師と比較すると166万円の差があります。
看護師と比較して給料が高い理由
助産師の給料が看護師と比べて高い理由は下記のとおりです。
資格取得の難易度
助産師になるためには、看護師資格を取得した後にさらに1〜2年の専門教育を受け、国家試験に合格することが必要です。
責任の重さ
助産師は母子の命に直接関わるため、責任の重さが給与に反映されています。
需要と供給のバランス
少子化の影響で産科医療機関が減少している一方で、助産師の需要は高い状態です。需給バランスが給与の高さにつながっています。
勤務形態
助産師は夜勤やオンコール対応が多く、不規則な勤務形態になりやすいことから給与に反映されています。
専門的な手当
分娩介助手当など、助産師特有の手当が存在することも年収を押し上げる要因です。
上記の要因により、助産師は看護師と比較して高い給与水準を維持しています。
助産師が給料アップするためには?
助産師としてより高い収入を目指すための方法は下記のとおりです。
- 常勤(二交代制):約450〜550万円
- 常勤(三交代制):約430〜550万円
- 夜勤なし:約350〜500万円
- 夜間専従:約450〜600万円
看護師長などの役職に就く
管理職に就くことで、基本給のアップに加えて役職手当や管理職手当が付くため、収入アップが見込めます。ただし、管理職になると現場での仕事が減り、スタッフの管理や病棟全体の運営に関わる仕事が増えます。管理職を目指すには、以下のようなステップが必要です。
- 臨床経験を積む(通常5〜10年程度)
- リーダーシップスキルを磨く
- 管理や経営に関する知識を身につける
- 院内の研修や外部の講習に積極的に参加する
管理職になることで、年収が100万円以上アップすることも珍しくありません。責任も大きくなるため、自身のキャリアプランをよく考えた上で目指すことが大切です。
開業して独立する
助産師は開業権を持つ数少ない医療職の一つです。開業することで、雇われて働くよりも高い収入を得られる可能性があります。開業条件は下記のとおりです。
- 助産師として5年以上の実務経験がある
- 都道府県知事の許可を得る
- 適切な設備と人員を確保する
開業の形態としては、分娩を扱う助産院を開く場合と、母乳ケアや産後ケアに特化した施設を開く場合があります。開業のメリットは次のとおりです。
- 自分の理想とする助産ケアを提供できる
- 収入が大きく増える可能性がある
- 働く時間や環境を自分で決められる
デメリットは以下のようになります。
- 初期投資が必要になる
- 経営リスクを負う
- 24時間体制での対応が必要になる
開業を考える場合は、十分な準備と計画が必要です。経営や財務に関する知識も必要となるため、事前の勉強をおすすめします。
待遇のよい職場に転職する
転職は比較的短期間で収入アップを図れる方法です。待遇のよい職場に転職する際のポイントは次のようになります。
- 大規模病院や大学病院を狙う
- 都市部の病院を検討する
- 夜勤の多い職場を選ぶ
- 分娩件数の多い病院を選ぶ
- 福利厚生の充実した職場を選ぶ
転職する際は給与だけでなく、労働環境や将来性なども含めて総合的に判断することが大切です。転職サイトや人材紹介会社の利用で、より多くの求人情報にアクセスできます。
»徹底比較!助産師におすすめの転職エージェント
スキルアップを図る
スキルアップは長期的な視点で見た場合、最も確実に収入アップにつながる方法です。以下にスキルアップの方法をいくつか紹介します。
専門資格の取得
新生児集中ケア認定看護師や不妊症看護認定看護師、母性看護専門看護師など
学会や研修への参加
日本助産学会や日本母性衛生学会、各種実技研修など
大学院進学
修士課程や博士課程
語学力の向上
英語圏からの妊婦対応
上記のスキルアップは、直接的な収入アップだけではありません。キャリアアップや長期的な収入増加への一歩へとつながります。
助産師の年収のよくある質問
助産師の年収に関してよく聞かれる質問にお答えします。助産師の年収についてもっと詳しく知りたい方は参考にしてください。
助産師の初任給はどれくらい?
助産師の初任給は、一般的に月給20〜23万円程度です。基本給以外の手当を加算すると、30万円を超えることもあります。具体的な例を挙げると、ある大学病院では以下のような初任給体系となっています。
- 基本給:22万円
- 資格手当:2万円
- 夜勤手当(4回/月):3万円
- その他手当:1万円
- 合計:28万円
基本給以外の手当を含めると、実際の初任給は高くなる可能性が高いです。
助産師で年収1,000万円は超えられる?
一般的に、助産師で年収1,000万円を超えることは難しいですが、不可能でもありません。年収1,000万円を達成するためには、以下のようなケースが考えられます。
- 大規模病院の管理職(看護部長クラス)になる
- 都市部の人気産科クリニックで働く
- 自身で助産院を開業し、成功させる
- 大学教授などの教育職に就く
上記のケースでは、高度な専門性や長年の経験、マネジメント能力などが求められます。長時間労働や高いストレスを伴う可能性も高いです。年収1,000万円を目指すことは良いモチベーションになります。しかし、仕事のやりがいや生活の質なども考慮に入れて、自分にとって最適なキャリアパスの選択が大切です。
» 助産師で年収1,000万円を目指す方法とは?
パートタイムの助産師の時給は?
パートタイムで働く助産師の時給は、一般的に1,500〜2,500円の範囲です。地域や勤務先の規模によって大きく異なります。具体的な例を挙げると、以下のような時給設定が見られます。
- 大都市圏の大規模病院:2,000〜2,500円
- 地方の中小病院:1,500〜2,000円
- クリニック:1,800〜2,200円
夜勤や休日勤務の場合は、さらに割増賃金が付くことが多いです。平日の日中が時給2,000円の場合、夜勤では2,500円、休日では2,600円といったイメージです。
パートタイムの場合でも、経験年数や保有する資格によって時給が上がることがあります。新生児集中ケア認定看護師の資格を持っている場合、通常より200〜500円程度時給が上がる可能性が高いです。
まとめ
助産師は、新しい命の誕生に立ち会い、母子の健康を守るという尊い使命を担っています。責任も重く不規則な勤務も多いため、単純に年収だけで判断してはいけません。自分の価値観や生活スタイルに合った働き方の選択が大切です。
助産師としてのキャリアを考える上で、継続的な学習とスキルアップはとても重要です。医療技術の進歩や社会のニーズの変化に対応しながら、自身の専門性を高めていきましょう。長期的な視点を以って仕事に臨むことこそが最も確実な年収アップの方法です。